ペッカリーの見る夢:第十六夢・・・海に沈んだ王国
オイラ、ゆうべ夢を見た。それは6月初めにグアテマラから来館してくれた、考古学を勉強してるっていう純粋なマヤ族のお姉さんの脳内DNAを読み込んだ大昔の記憶夢だったの。お姉さんの53代前のマヤ族のご先祖さまヤシュ・キンが西暦780年7月に体験した、信じられないようなできごとのね。
*三千年前、現在のエクアドルで栄えたチョレーラ文化で作られた動物象形土偶ペッカリーには、人の心を読むという不思議な力が備わっている。しかもその場で読むのではなく、昼間読んだ記憶が数日後の夢の中に蘇るという形で。下で紹介するペッカリーの夢は、その夢を(ペッカリーと思いを通わせることができる)BIZEN中南米美術館の館長が文章にしたものである。
「ヤシュはいるか?ヤシュ・・・」
ヤシュ・キンの父で死の床にあったキニチ・カウィールは、いまにも途切れそうな弱々しい声で脇に控えていたヤシュ・キンを呼び寄せ、こう伝えた。
「ワシは、もうダメじゃ。シバルバー(マヤの冥界)からア・プチ(マヤの死神)が来ておる」
「何をおっしゃいます父上。まだ・・・」
とヤシュは言いかけたが、命の残り火が尽きる前に伝えなくてはとばかりキニチは続けた。
「よいか、ヤシュ。われらと同じ血の流れをお持ちで、ワシのひい爺さまが格別の御恩を受けたフシュウィッツのワシャクラフーン・ウバーフ・カウィール大王の恨みを必ず晴らすのじゃ。ワシの代では晴らしえなかった恨みをな」
そこまで言うと、キニチの魂はア・プチの両手に抱かれてしまった。
*フシュウィッツとは、20世紀以降コパンと呼ばれている戦国マヤの大王国の本当の国名。コパンの本来の国名にはさまざまな説が提唱されたが、現時点ではフシュウィッツが最も有力な名とされている。コパンは、80もの王国が乱立したマヤ文明古典期(紀元3~10世紀)に覇権争いを繰り広げた二大超大王国、ティカル(本来の国名はムタル)とカラクムル(本来の国名はオシュテトゥーン)のうち、ティカルが最も頼りにした同盟国だった。というのもコパンを建国した初代王キニチ・ヤシュ・クック・モは、ティカルの王子だったからである。コパンは西暦695年に13代目の王ワシャクラフーン・ウバーフ・カウィールの治世に最も繫栄し、マヤ世界の東南地域を宗主国ティカルの勢力圏として支配していた。だが敵国カラクムルの「そそのかし」に乗った、自らの同盟国キリグア(本来の国名はイク・ナーブという小国)の王カック・ティリウ・チャン・ヨアートの裏切りにあい、ワシャクラフーンはコパン繫栄の絶頂で下剋上に倒れた悲劇の王として、その名を後世に残すことになったのだ。
ヤシュ・キンは、ティカル同盟の中でも下から数えた方が早いほどの小さな国(仮にY王国としておこう)の王キニチ・カウィールの後継者だった。カリブ海に注ぐモタグア川河口北部の海岸に位置していたY王国は、小国とはいえコパン同様ティカルの王子の一人が建国した由緒正しき王国で、兄弟国コパンがワシャクラフーン王を失った後もコパンを支え続けていた。そして父を失った10年後の西暦780年7月、ヤシュ・キンはワシャクラフーンの三代後の王でコパンの国勢を復興させたヤシュ・パサフと共にキリグアに向けて大軍を進めたのだった。その時キリグアでは、なんと!738年にワシャクラフーンを捕え斬首した裏切り者カック・ティリウ・チャン・ヨアートが未だ存命だった(85歳)。
コパンとY王国の同盟軍は当初こそ優勢だったが、カラクムルの援軍を得たキリグアとの間で戦いは膠着状態となり、結局戦いは痛み分けに終わった。だが敵味方が互いに終戦を確認しあったその時、悲劇が起こった。モタグア大震災だ。Y王国に帰還しようとしたヤシュ・キン率いる軍勢が母国に到着する直前に起こった大震災はY王国を直撃し、国は丸ごとカリブの海中に沈んだのだった。
国を失ったヤシュ・キンたちは行き場を失い、さりとて戦で疲弊した友国コパンに兵全員が助けを求めるのは忍びなかった。そこでヤシュ・キンは主だった部下たちと共に南に向かい、太平洋岸に暫くとどまって大型の長距離移動用丸木舟を多数作り、食料と水を満載して西に向かって大海に漕ぎ出したのだった。
ここまでがマヤ族のお姉さんの脳内DNAの記憶なの。だから、ヤシュ・キンたちがその後どうなったかは誰も知らないんだよ。でも大海の東の大地に住んでいた民が南太平洋の島々に点々と立ち寄りながら、最後に金色に輝く島国にたどり着いたっていう伝説があるみたい。ひょっとすると、それは日本かも知れないんだって。そうだとすると、ヤシュ・キンの子孫たちは日本人の一部になったんだろうね。それに・・・もしかするとカリブ海に沈んだY王国っていうのは、ヤシュナーブ王国ってのが本当に国名だったりして。オイラんちBIZEN中南米美術館の館長がヤシュ・ナーブ村っていう村を作って、いつか村を王国にしたいって夢見てるのは、館長の体の中にヤシュ・キンのDNAが残されていて、そのDNAがヤシュナーブ王国を再興しようとしてるのかもしれない。
★最初の夢へのトンネルは、ここ → https://peccary877choco.seesaa.net/article/201307article_1.html
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