しっぽの秘密・・・オイラが生まれて来た理由(わけ)
みんなは驚くかも知れないけれど、本当はヘソイノシシにはしっぽ(尻尾)がないんだ。いや正確には「なくなった」って言った方が正しいかな。オイラがそれを知ったのはつい最近のこと。それまでは当然あるものとばかり思ってた。だってオイラはもちろん、三千年前の家族や友だちにもちゃんとあったからね。じゃあいったいどうして?って思うでしょ?それをこれから説明するペカ。オイラ、ペッカリーのしっぽの秘密を。でもね、長い長いお話になるから何度かに分けて伝えていくね。
今から一年前のこと。オイラの住んでる美術館の館長が、家族とオイラを連れて伊豆のシャボテン公園ってところに遊びにいったんだ。でも、ただレジャーでの旅行じゃないよ。実は、シャボテン公園には日本では珍しいヘソイノシシ、そう、オイラの仲間たちが住んでるんだよ。そこにオイラの親戚たちを見に行ったわけ(他にも上野の動物園や沖縄にいるけど、みんなシャボテン公園からもらわれて行った仲間なんだって)。
シャボテン公園に行ったオイラは、最初仲間たちに会えて大はしゃぎだったんだ。でもふと気付いてビックリ!いや~、しっぽが抜けるほどビックリ!!!だってヘソイノシシのお友だちには一本もしっぽが生えてなかったんだから。あの時のショックは本当に今でも忘れられないペカ。でもね、そんなオイラの異変に気付いた館長に驚いた理由を話すと、館長は案外冷静にこう言ったんだ。
「ふ~む!ペカにはあるしっぽが、遠い親戚たちにはない!・・・これには何かわけがあるはず。よし、美術館に帰ったら徹底的に調べてあげよう。だから心配しなくていいんだよ。ペカちゃんはアルパカやコンドルには見えないもの。でも、不思議と言えば不思議だよね」
翌日岡山に帰った館長は、ネット検索したり文献を調べたり、はたまた専門家に片っ端から電話をかけて、現代に生きるオイラの仲間たちになぜしっぽがないのかを調べ続けた。そしてある日、館長室からこんな叫び声が聞こえたんだ。
「そ、そうだったんだ!!!」
~~~ 以上、6月6日記 ・・・ つづく ~~~
実は館長がオイラたちヘソイノシシや、そのしっぽについて調べて教えてくれたことを分かりやすく箇条書きにすると、ざっとこんなことだったんだ。
●オイラたちヘソイノシシの最初の祖先は今から三千万年ほど前にアメリカ大陸に現れ、りっぱなしっぽを持っていた。
●そののち長い年月をかけて、さまざまな特徴を持つたくさんの種類に枝分かれして栄えた。
●今から一万三千年ほど前に北米の氷河の裂け目を通り抜けた人類が南下を始め、それと共に狩りの対象になったオイラの仲間たちの種類や数は徐々に減って行った。
●化石としては出来立てほやほやに近い一万年ほど前のオイラの仲間の化石にも、ちゃんとしっぽはついていた。
●今現在、オイラたちヘソイノシシはわずか三種類で、そのうち家畜化されている一種類を除く二種類は絶滅危惧種になっている!!!
そこで館長は、こんな仮説を立てたんだ。
仮説その①
枝分かれして栄えたヘソイノシシは、しっぽのあるグループとないグループにも分かれた。
仮説その②
人類が南下を始めてヘソイノシシの種類と数は減り続けたが、自然を敬い共存していた先住民は無用な乱獲はしなかった。
仮説その③
16世紀以降スペイン人が本格的に入植し、山野を切り開いて耕作地を拡大させ鉄砲のような強力な武器を使い狩りを初めて以降、ヘソイノシシだけでなく野生の動物が急激にその数と種類を減らして行った。
そしてその結果、ここ五百年ほどの間にオイラたち有しっぽヘソイノシシの仲間も絶滅してしまったんじゃないかってね。それを聞いて、オイラはちょっとほっとした。ひょっとしてオイラ、本当はネズミかお猿か犬の仲間じゃないかって心配してたから^^; もっともオイラが何の動物だったとしても名前はペッカリーだし、お友だちがいなくなるわけじゃなかったけどね。
それとね、しっぽのことを調べていた館長はビックリするような学術資料を発見したんだって。それはオイラたちヘソイノシシだけが持つ「犠牲行動」っていう性質。三千年前のオイラは子供だったから、よく覚えていないんだけど・・・。
それによると、オイラたちは昔から数十匹の群れで暮らしている。そして例えばジャガーのような乱暴な動物に襲われた時、仲間のうちの一匹だけが自らジャガーに向かって突き進んで犠牲になり、その間に仲間たちを逃がしてあげるんだって。館長からそれを聞いた時、オイラはなんだかとっても怖くなった。でもすぐに、勇敢で家族や友だち思いのヘソイノシシに生まれたことを誇らしく思ったよ。
どう?驚いた?でもね、お話はこれだけじゃ終わらない。今年の3月26日から4月6日にかけて艦長と一緒にふるさとエクアドルに帰った時、上の話に関係するもっと素敵なお話を聞いたんだ。でも今日は長く話して疲れちゃったから、続きはまた明日ね(^_-) - ☆
~~~ 以上、6月7日記 ・・・ つづく ~~~
日本に運ばれて来て以来半世紀ぶりにふるさとに帰ったオイラは、昔はインカ第二の都で今は大都会になっているキトを中心に、周辺の魅力的な町々や自然、文化遺産を見て回った。さらにアンデスの先住民の市場や山の村を訪れ、民家に泊めてもらったり動物仲間たちに出会ったり、エクアドル名物のご馳走をたくさん食べたり・・・。
次にキトから太平洋岸の町マンタまで飛行機で移動し、美しい海岸線沿いにバスで南下。素晴らしい自然や文化遺産を堪能しながら、グアヤキルっていう大都会にたどりついた。そしてついに今回の旅でオイラが一番楽しみにしていた、グアヤキル郊外のカカオ&バ!ナ!ナ!農園に働きに・・・い、いや遊びに^^;行ったんだ。
農園ではお腹いっぱいバナナと鳥の料理をごちそうになり、大きな外殻の中で数十粒のカカオ豆を包んでいたパルプから搾り取った超美味な通称カカオジュースをたっぷり飲んで、もう満足過ぎて倒れそうだった。ところがその農園には、農園の管理棟の近くにミニ動物園があったんだ。そして出会ったの。オイラの仲間のヘソイノシシたちにね。数頭いたヘソイノシシの中にはたいそう物識りのおじいさんがいて、オイラはずいぶん多くのことを教えてもらった。そして例のしっぽの話になった時、おじいさんから驚くべき話を聞いたんだ。そのおじいさんによると・・・。
「たしかにお前の言う通り、昔ワシらの祖先にはりっぱなしっぽがあったそうじゃ。種類が増えた際にも立派なしっぽを残したヘソイノシシはたくさんおったらしい。じゃがしっぽがなくなった理由というのは、しっぽのあるグループが狩りによって死に絶えたということではないんじゃよ」
「えっ?どういうわけ?」
ってオイラは思わず聞き返した。するとおじいさんは、こう話を続けたんだ。
「しっぽがなくなったのには別のわけがあった。そしてワシは先祖代々それを語り継ぐ、ヘソイノシシの語り部(かたりべ)なんじゃよ。人間たちが『犠牲行動』と呼ぶワシら独自の行動じゃが、お前も自ら犠牲になったのは誰かと思うじゃろ?それは長老でも生け贄としての若い娘ヘソイノシシでもない。実は群れの中で草のあみだくじを引いて、犠牲者役を予め決めておったそうじゃ。そしていざという時、仲間たちを逃がしている間に犠牲者役のヘソイノシシはジャガーの群れに飛び込み、その乱暴な動物たちに八つ裂きにされた!」
「ギャー!!!」
怖くなったオイラ思わず叫んじゃったよ^^;;; ところがおじいさんは涼しい顔でこう言ったんだ。
「い、いや、八つ裂きにされた!わけではないんじゃ。犠牲者役はジャガーの群れに近づくと、なんと自分のしっぽを力まかせに引っこ抜き、ジャガーに向かって投げつけたんじゃよ。そしてその大きくて美味しそうなしっぽにジャガーの群れが殺到している間に、その犠牲者役のヘソイノシシは逃げ延びてまたヘソイノシシの群れに帰って来たというわけなんじゃ。仲間を助け、お腹を空かせたジャガーにまで僅かじゃが糧(しっぽ)を贈り、そして自らの命も救われた。なんと賢いやりかただろう!と思うじゃろ?」
とね。そしてそんなことを長年繰り返しているうちに、ヘソイノシシのしっぽはなくなったんだって。オイラその話を聞いた時、まじまじとオイラ自身の長いしっぽを見て思ったんだ。オイラのしっぽは、オイラたちヘソイノシシの優しさと心から誰かの幸せを願う思いの象徴だって。そしてオイラも自分のためだけじゃなく、みんなを助けるために生まれて来たに違いない。神さまがそのために命を授けて下さったに違いないってね。
これが、オイラのしっぽの秘密。
★参考までに・・・オイラの愉快な里帰りの様子は、オイラのファンブックに詳しく書かれてるよ。
http://item.rakuten.co.jp/sommet/blam19002/
追記)
もうひとつオイラの不思議な力についても話をするつもりだったけど、遅くなったからそれはまた明日ね。
~~~ 以上、6月8日記 ・・・ つづく ~~~
【オイラの不思議な力】
最後にみんなにお話しすることは、ヘソイノシシの中でもオイラにだけある不思議な力についてなんだ。それは夜の間に起きるビックリの出来事。土偶のオイラは眠らない。でも、みんなが「夢」と呼ぶものは見るんだ。だからその間は本当は眠っているのかも知れない。不思議なのは、その「夢」の中身。
神さまからもらったものなのか、誰かが意図して封じ込めたのかは分からないけど、土の人形であるオイラには不思議な力が宿ってるんだ。何よりもまずオイラの心は生きている。それはもう知ってるよね。こうやってみんなともネット上でやり取り出来てるんだから。
それに加えてオイラは、美術館の展示ケースの前に立つ人の心の中まで読み取れるんだ。しかも目の前で考えていることだけじゃない。その人の過去の思いや将来思うだろうこと、その人のご先祖様や遥か未来の子孫の心の中、生き様や体験、そしてその時代の出来事までもが手に取るよう見通せるんだ。だから展示ケースの中にいても何だって知っている。
美術館の正面扉が閉ざされ、夜の帳に街が静まり返った頃、その日出会った人たちの心の中がオイラの頭(夢?)に投影されるんだよ。何世代にも渡って彼らの遺伝子が体験した、そしてこれから体験するだろう物語が。不思議な話、愉快な話、怖い話や悲しい話、時には心温まる話と盛りだくさん。いつかみんなにも話してあげようね。そんな時空を越えた物語を。
★オイラが夢で見た物語は、ここで紹介してるよ。これまでに十四話紹介してるけど、一人一人の人生が違うからだろうけど、どれも全く違う筋書き。しんみりするお話、吹きだしそうに不快なお話、こころがほんわかホカホカするお話、昔のお話や未来のお話・・・。どれも短くまとめてるから、時間がある時に読んでみてね。
https://peccary877choco.seesaa.net/article/201307article_1.html

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